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「杉の花粉」の独断と偏見に満ちた愛読書紹介コーナー

「杉の花粉」の独断と偏見に満ちた愛読書紹介コーナー

8 君は今何おもう?

君は今何おもう?

 最近
 GyaOのミュージック・クリップが
 十数年前に流行した曲を流している。

 酷く懐かしかった
 久保田利伸の『Missing』、『LA・LA・LA・LA・LOVE SONG』を
 思わず、日記に書いてしまったもの。

 今日は
 「うつ」の徒然なるまま
 B'zの『LOVE PHANTOM』を聴いた。
 バイオリン協奏の哀しい調べ、で始まる『LOVE PHANTOM』は
 リアルタイムで聴いていて
 私の大好きな曲だった。

♪いらない何も 捨ててしまおう 君を探し彷徨(さまよ)う MY SOUL
 STOP THE TIME,、SHOUT IT OUT がまんできない・・・♪
 何か。
 ・・ブルーハーツのよーだけど。

 兎に角。
 曲を聴くうちに或る光景が浮かんでくる。

♪ちょうど風のない海のように 退屈な日々だった
 思えば花も色褪せていたよ 君に会うまでは♪

 中華人民共和国に語学留学して1ヶ月
 大学の学生寮には日本人も多かったけれど
 一応
 公費で半年間の留学だった、ので
 帰国後に中国語が話せない、と云う訳にはいかない。
 だから
 日本人留学生の数人と少し話すくらいで
 拙い英語と余り理解できない中国語の日々を送っていた。

 窓に面した机は
 1日拭くのを忘れる、と砂の細かい層が張る。
 盛夏だったのに花の色、なんて
 一つも思い出せはしない。
 遅々として進まない語学の習得も合間って
 黄砂に包まれた街は
 私の精神状態まで、土気色に染め始めていた。
 
 そこに
 別の大学に住む日本人女性が現れた。

 毎週、金曜の授業が午前中で終わる、と。
 街外れのバス停車場で待つ。

 電話なんか繋がらない、し。
 街を半周する高速道路建設工事が一斉に進められ
 主要幹線道路が一斉に通行止め、になり。
 当然に
 想像を絶する交通渋滞が引き起こされていた。

 何時に到着するのか、なんて全く判らない。
 だから
 バス停車場に続く路地で
 鶏卵や果物を売っている小父さん、なんかと世間話をしながら
 2時間も3時間も待つ。
 
♪濡れる身体 溶けてしまうほど
 昼も夜も離れずに 過ごした時はホントなの・・♪

 輝いた笑顔の彼女が到着してから
 哀しい笑顔で別れる日曜の午後まで。
 小さな、手を、身体を
 決して離すこと、は無かった。

 或る日。
 彼女を、学生寮別棟のゲストルームに泊めて
 何時もの通り
 彼女の部屋で過ごした、早朝。
 学生寮の玄関で
 私が預けられていた政府機関職員の声が聞こえる。
 そして
 私の部屋に向かう留学生の足音と。

 居ないようです。
 留学生の返事が聞こえる。

 こんな時間に居ない筈がない。
 政府職員の声が聞こえてくる。

 3階のゲストルームの窓から
 渡り廊下の屋根を伝い、談話室の窓から学生寮に忍び込む。

 談話室に居た、ので。
 そう、訝る表情の政府職員に何とか返事を、した。

♪腹の底から君の名前を 叫んで飛び出したIt’s my soul
 カラのカラダがとぼとぼと はしゃぐ街を歩く♪

 先に帰国する彼女を空港まで送る。
 涙ぐみ
 小柄なスーツケースを引いていく、その後姿。
 その残像が忘れられなく、て
 ただ彷徨った上海の雑踏。
 その賑わい、を
 何も・・覚えていない。

 あれから
 もう十年が経つ。
 私は
 他の女性と出会い、結婚して、そして別れた。

♪ふたりでひとつになれちゃうことを 気持ちいいと思ううちに
 少しのズレも許せない せこい人間になってたよ♪

 そして
♪欲しい気持ちが成長しすぎて 愛することを忘れて
 万能の君の幻を 僕の中に創ってた♪
 の・・かも知れない。
 
 いや。
 『LOVE PHANTOM』を聴いて
 彼女のこと、を思い出したのだけれど。
 彼女に感じるのは
 懐かしさで、愛おしさ、ではない。
 
 自分を生きる、のに忙(せわ)し過ぎて
 少しのズレも許せない、せこい人間になってた、のか。
 酷くスクエアな自分、が現実(いま)の鏡に映ってる。

 そして私は。
 自分を取り巻く社会・環境を
 愛することなく、ただ求めすぎて
 その万能の夢・幻を
 自分自身に見ていなかった、か。

♪いらない何も 捨ててしまおう 君を探し彷徨(さまよ)う MY SOUL
 STOP THE TIME、SHOUT IT OUT がまんできない♪
 
 何時しかスクエアな
 自分自身の中に創り上げた、万能の君の幻。
 それを、闇雲に追い駆ける生活。
 立ち止まったら全てを見失ってしまう、そんな妄念を抱きながら、の。
 
 過去の思い出は
 決して将来に続いては、いない。
 思い出は美しいまま、そのままで良い。
 だから
 過去に見た、万能の君(将来)の幻。
 そんなもの
 何も、いらない。
 全部、捨ててしまえ。

♪せわしい街のカンジがいやだよ 君はいないから
 夢に向かい交差点を渡る 「途中の人」はいいね♪

 どれ程、夢が残っているのか、なんて知らないけれど。
 私は
 未だ、夢に向かい交差点を渡る途中の人。
 そんな幻想くらい
 そんな我侭くらい
 許してもらいたい。
 
 未だ
 私の見果てぬ君(夢)よ。
 君は今何おもう?

♪『LOVE PHANTOM』B'z♪


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